彼には考えていることがあった。それは現在の自分の生活ひいては人生についてだった。悩みはない。悩みはないのだ、たしかに。悩みはない。しかし、彼(Y男)のイメージでは彼の人生のカラーは、あまり派手な色彩ではなかった。彼は、刺激を求める性格だったのである。
刺激を求めてやまない性格...。そんな彼にとってなんの悩みもないもののあまり刺激もない人生など、単調なものでしかなかった。そういうわけで、彼は、たまに薬物を使用することがあった。薬物といっても化学剤のたぐいだが。その内訳は、シンナーとトルエンとセルロースのコンボである。
それでキメる。最高。そう、彼は、立派なアシッドヘッドだったのだ。軽度~中くらい程度ではあるが。
Y男は、ビデオデッキのスロットにビデオテープを挿入した。レーベルは、もちろん『黒い下着の女』である。ビデオ(テレビ)のコントローラーを操作し、モードをテレビからビデオに切り換える。チャンネルをX-Ch(ビデオのチャンネル)に切り換える。
ブラウン管にいっぱいに砂の嵐が映し出される。砂の嵐はしばらく映し出されていた。少し長いな、とY男は感じた。しばらく待っても一向に画面が変わる気配がない。いくらなんでも長すぎるだろ、Y男がそう感じた瞬間だった。砂の嵐画面は相変わらずなのだが、そのパターンがある一定のパターンを持っているように、Y男の目には映ったのだ。それは、人の顔だった。それも、長い髪の女性だ。Y男は、どことなくその女性に見覚えがある気がした。そう、あのビデオレーベルの写真の女性だ。