女性の長い髪の毛は、やはりウェーブがかかっている。長い黒髪。砂の嵐の画面で、どうして黒髪とわかるのか不思議だが。別に不思議なことではないかもしれないが。その、砂の嵐に映し出された女性の顔は、最初の間、顔および髪の毛の輪郭だけだったが、そのうちに首および肩の輪郭が形成されていく(ようにY男には思えた)。そして、いまや目鼻といった顔のこまかなパーツが形成されつつあった。
(こちらを見ている?!)
Y男は、女性の顔の目がこちらを見ているような気がした。

Y男は、思わず目を閉じた。そして、ふたたび目を開ける。そこには、もう、女の顔はなかった。画面には、以前と同じ砂の嵐の映像が映っているばかりだ。あの女性の顔はなんだったのか。それとも、あれは、Y男の見た幻覚、一瞬の白日夢だったのだろうか。
ビデオ画面は、唐突に遷移した。砂の嵐が黒い画面に切り換わる。そこにデカデカと映し出される、白抜きの文字列。文字列は、“黒い下着の女”である。

黒い背景に白抜きの文字列が消え、黒い画面が切り換わる。そこに映し出されたのは...、そこに映し出されたのは、どこかの室内だ。モダンな洋風の空間ではない。丸出しの和室である。畳の間にちゃぶ台はない。わりとせまい。室内に調度品のたぐいは少なく、全体的に殺風景な雰囲気を、Y男に与えた。部屋には、しょうじのふすまが一カ所だけ存在する。どうやらこれがこの部屋の唯一の出入り口らしい(と、Y男は思った)。